4月11日から提案募集を開始した200年住宅のモデル事業(超長期住宅先導的モデル事業)。「ストック社会のあり方を示す」という目的を掲げる事業の意図、そして今回の募集で期待する提案について、担当官である国土交通省住宅局市街地住宅整備室の伊藤明子室長に聞いた。(日経ホームビルダー:真部保良、安達功、写真:古賀のりお)
(1) 提案募集への反響 新築に偏っているQ:4月11日に開始した提案募集への応募状況はどうですか?
A:予想を上回る反響ですが、新築に偏っている印象です。
――4月11日から、200年住宅を実現するための先進的な提案を募る「モデル事業」の募集が始まりました。応募状況や反響はどうですか?
伊藤 思った以上の反響があり、質問なども数多く寄せられています。ありがたいと感じる半面、質問も含めて、新築に偏っている印象です。また、
共同住宅が少なく戸建て住宅の方が多い。 募集部門は新築住宅だけでなく、「既存住宅の改修」や「維持管理・流通などのシステムの整備」、「技術の検証」、「情報提供および普及」の5部門にわたっています。
このモデル事業は、新築だけのために行うわけではありません。そういった意味もあって、公募する提案事業の部門を5つに分けました。
再生やリノベーションに近い改修の提案もほしいところですが、
現状はどうも「基準をクリアすれば新築住宅に200万円の補助が出る」ととらえられているようです。新築を前提とした取り上げ方も多い。これはこちらの思いとは違うかなと感じます。 ――そのあたりのバランスなどは審査の際に配慮しますか?
伊藤 新築住宅以外の提案も積極的に募りたいですし、よい提案は選びたいですね。それぞれの部門のイメージは、募集要領に記載しています。説明を補足するためのQ&Aもホームページなどで公開しています。
第一回の募集は5月12日に締め切って7月上旬に結果を決定、公表する予定です。審査では分野別のバランスにもすごく気にしなければならないと考えています。
全部が新築だけ、といった状況にはならないようにしたい。 提案を評価する視点として、「住宅の長寿命化に資する新しい技術の進展に寄与する」だけでなく、「超長期住宅の普及のための体制やしくみの整備に寄与する」という項目を挙げています。これは
住宅を長持ちさせるための体制を整えていただけませんか、しくみも合わせて考えていただけませんかというメッセージです。 (2) モデル事業の意義 具体的なイメージを示すQ:そもそも今回のモデル事業の意義はどんなものですか?
A:200年住宅の具体的なイメージをできるだけ早く示すことです。
――法律が施行される前にモデル事業開始ということで、なかなかイメージもとらえにくいようです。そもそも今回のモデル事業の意義はどんなものですか?
伊藤 まず、200年住宅とはどんなものかを示す。そのためには「もの」を見せるのが一番わかりやすい。これがモデル事業の大きな意義です。募集要項にも「国民に身近なところで具体のものを見せる機会を創出することでの住宅の長寿命化への理解の促進」という言葉を強調して書いています。
住まい手側が「ああ、こんなものなのか」とわかるような提案がほしい。こういった、わたしたちの気持ちというか、モデル事業に何を期待するかは、募集要領にけっこう込めたつもりなんですね。
わたしたちの思いとしては、一般の国民にも「長持ちとは何か」を見せてストック型社会への変化を促したいのです。7月上旬に発表される第一回の事業でイメージを示し、すぐその後、8月に2回目の募集をかけます。
選ばれたプロジェクトを見れば「ああ、こんなものを求めているのだな」とわかるでしょう。ちょっとタイトなスケジュールですが、そんな効果を期待しています。
――大手住宅会社のほうが対応しやすい印象はありませんか? 大手だけにお金がいくような…
伊藤 そんなことはありませんよ。読み取りにくいかもしれませんが、工法別、住宅会社の規模別に「多様な取り組みが展開されるように配慮する」と、募集要項にも明示しました。単純に選ぶわけではなく、審査の際にはそのあたりのバランスにも配慮します。
工務店などの小規模なところでは、単独で企画して提案するのは難しいかもしれません。そこで複数の事業者のグループや、社団法人、地方公共団体と住宅会社の連携による提案も受け付けます。中小が提案しやすいようにと、相当、気にしています。そのことによって全体を底上げする効果も期待しています。
(3) 200年住宅の実像 ハイスペック住宅ではないQ:200年住宅は頑丈な住宅というイメージがあります。
A:必ずしもハイスペック住宅ではありません。そこは誤解しないでほしい。
――200年住宅という言葉は非常にインパクトがあるのですが、なかなか実像をイメージしにくい。どうとらえればよいのでしょう。
伊藤 ひとつ強調しておきたいのは、
200年住宅はハイスペック住宅ではないということです。むしろ、少し頑丈につくって、きちんと手入れして長持ちさせる。ひたすら堅牢な人工構造物をつくらなければいけないというイメージを与えているとしたら、それは大きな誤解だし、その誤解は解いておきたい。
――今のところ、明らかになっているのが建物の基本性能の基準だけなので、逆にハードの頑丈さばかりが強調されている印象がありますね。
伊藤 私はこのプロジェクトを「住宅の資産化運動であり、長持ち運動」と位置づけています。きちんと点検されて、高く評価されるものは価値が下がらないということをやりたいわけです。
「200年」という数字は長持ちの象徴として掲げるものです。物理的に200年もつ頑丈な住宅をつくるのではなく、「資産価値を高める」「長く使う」という発想の転換を図ることが重要だと考えています。
(4) 何が変わるのか? 住宅に「時間軸」を入れるQ:200年住宅で何が変わりますか?
A:最大の転換は住宅づくりに「時間軸」を入れることです。
――発想の転換とは、具体的に何をどう変えることですか?
伊藤 200年という時間軸を考えると、ある世帯が継続して住み続けることは想像しにくいでしょう。住宅の寿命を長くすると、必然的に持ち主が変わることが前提になると思います。だから、建築技術的な面だけではすまない世界になってくる。
具体的には流通や金融などの社会システムも含めて考えないと成り立ちませんね。こういった「社会システムを含めて考える」というアプローチは、これまでのセンチュリーハウジングシステム(CHS=100年住宅)などと違う部分だと思います。
――募集要項の冒頭で「ストック社会の住宅のあり方について、具体の内容を広く国民に提示」とあります。
伊藤 ストック社会の住宅のあり方というのは、これから探っていくわけですが、ひとつの視点は「時間軸」だと思います。
さきほどの話の続きでいえば、200年というのは5世代から6世代です。それだけの長きにわたって同じ一家の人が住むことはやはり考えにくい。
つまり、売ったり買ったりできるか? フロー化できるか? が問われる。これは外の人からの評価です。借り上げられたり、買い取られたりという仕組みをどうつくるか。200年住宅は家づくりの「出口戦略」といってもいいかもしれません。
国民に対して知らしめていくことも大切です。このために住宅長寿命化推進協議会というものも立ち上げました。200年住宅の事業は5年にわたって続けていきます。モデル事業が先行した形になりましたが、国会で審議中の「長期優良住宅の普及の促進に関する法律案」が施行されれば、税制や履歴整備などの枠組みも明らかになります。